お前がいる場所が、好き。Ⅰ
からかい上手で優しい君
「……くしょん! くしょん!」
翌朝。わたしの口から出るくしゃみが止まらなくなった。かなり寒い。
「38度……。これは学校休まないとね」
測ったばかりの体温計を見て、お母さんが言った。
くしゃみが止まらないわたしを見てお母さんは、熱があるかもしれない、と予想して、体温を測ったのだ。
「……ん」
「そうだわ。後、当分あの湖に行くのもやめなさい」
「え! そんなぁ、そこまでは……」
「沙織」
お母さんの声が、少し冷たくなった。表情も、厳しくなっている。
「きっと湖に落ちたのが原因なのよ。また落ちて熱出して学校休むってことになったら、どうするの?」
お母さんの言うことは、正論だけれど、もう寺本としばらく湖の場所で会話できないのは、嫌だ。
「熱が出た原因、ちゃんと考えれば、分かるでしょ? 他に原因があるとでも言うなら、言いなさい」
「ごめんなさい、何もないです……」
「とにかく、湖に行きたいなら深く反省をしておきなさい」
桜花ちゃんに落とされた、なんて言えないや。わたしは、下を向いて、黙り込んだ。
「ちょっと、聞いてるの? 反省しないんだったら、二度と湖には行かせないわよ?」
「はい、反省します……」
わたしが言うと、お母さんは怒るのをやめて、ふんわりと笑った。
「そう、良かった。お母さん、仕事に行くから、沙織はちゃんと寝ておくことね!」
「うん。行ってらっしゃい……」
お母さんが部屋を出て行くのを見送ってから、わたしはまたベッドで横になった。