お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「栗原さん、おはよー!」
「桜花ちゃーん!」
廊下で男子達の声が響いた。
わたし達は、少し背伸びしてのぞいてみる。
中央には、確かに桜花ちゃんがいる。あんなに男子に囲まれて、少し恥ずかしいのか、頰をピンク色にしている。
「あっ! 栗原さんがいる。沙織は窓際行って!」
「うん!」
奈緒と美咲にぐいぐいと押されて、わたしの身体は窓際へと移動された。
「相変わらず人気者だなぁ。あの栗原さんが沙織を湖に落としたことも知らないで」
廊下にいる男子の声を聞きながら、美咲は少し声に怒気を含めていた。
「まあまあ美咲。そういうことを言っても、きっとみんなは信じないから。言わない方がいいよ」
奈緒は、美咲の肩をぽんぽんと叩いた。
「うん、しょうがないよ。別に、わたしは大丈夫だから」
美咲は、わたしのためにこうやって怒ってくれている。本当に嬉しい。
奈緒は、これ以上わたしと栗原さんのことでひどくならないように色々と考えてくれている。
これだけで、わたしは嬉しいから。
そう思って、わたしは美咲に微笑んだ。