お前がいる場所が、好き。Ⅰ

「増山」



塾へ行くと、突然寺本に話しかけられた。



「うん?」



「熱……大丈夫か?」



「あれ、知ってるの?」



わたしと寺本は、学校が違うので彼はわたしが熱を出したことなんて、普通知らない。それに、わたしが熱を出している間、わたしも寺本も塾には行かなかった。
そんな寺本が知っているのは、おかしい。



「一昨日、青柳と丸山が一緒にいたから、『増山は一緒じゃないのか?』って聞いたんだよ。そしたら、青柳がお前が熱出したから、見舞いに行くって」



「あー! うん、もう大丈夫!」



成る程。美咲も奈緒も、寺本の話なんて全然していなかったから、知らなかった。



「そっか。なら良かったんだけど、質問があるんだ」



「何?」



そう聞きながら、わたしは瞬きを繰り返した。



「お前って、水族館好きか?」



「うん、好きだけど」



「実は、今度下の弟と妹たちが友達や親とピクニックがあって暇だから、1番上の妹と水族館に行こうと思ったんだけど」



水族館のチケットをポケットから出しながら、寺本は話を続けた。



「それでチケット2枚買った次の日に、妹まで友達とカフェに行くなんてドタキャンされて」



わたしは、顔を近づけてチケットを見てみた。可愛いイルカの絵が描かれてある。




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