翔ける想いと×ふたり
ある日の事。
母が私に言った。
「あんたもちょっとは遊んできたら?」
その母の言葉に、「え、」と一瞬戸惑ったが、育児で家に籠りがちな私への気遣いだという事をすぐに察した。
それか、最近どこか上の空な私の心中を母が察してくれたのか。
分からないけど、出産してからというもの、気分転換のきの字もした事が無かった私は、母なりの気遣いに甘えさせてもらう事にした。
これが、翔との出会いのほんのきっかけ。
「じゃあ、姫奈の事よろしくねお母さん」
髪を乾かし終えた姫奈の頭は、フサフサで、暖かくて、まるで春の気温を浴びたかのよう。
夜7時。
風呂を終え、哺乳瓶を洗ったり、大体の家事は済ませている。
「ミルクは大体3時間置きだけど、夜ぐっすりだったら起きてからでも良いから。泣くようなら、その時はお願いします」
「分かったよ。まず、あまり遅くならないようにね」
少し心配げな母を見て、いつまでも親は子供が心配なんだなと、19歳になっても伝わる親心に胸が暖かくなった。
「それじゃあ姫奈、ママ行ってくるね」
姫奈に手を振り、実家を出る。
家に籠っているのが当たり前だったからか、久々の感覚にワクワクしていた。
約束していた友達はすでに家の近くまで来ていた。