【完】君と一生を
達者でな
あれから数日。
ファミリアは前より笑顔が増え、その笑顔の後にはいつも寂しそうな顔をするようになった。
シンがファミリアのことを考えながら洗濯していると、
ロンが出かける前に良くする結界強化をしていた。
「ロン、どこか行くのか?」
「…。」
ロンはシンの問いかけには答えず、シンを一瞬見ると、すぐに後ろに視線を移した。
「ファミリア…。」
ロンの視線の先には、最初に会った時の格好をしているファミリアが居た。
ファミリアはシンに近づくと話しをしだした。
「シン…今まで黙ってたけど、私この国の王女なの。
だからもう行かなくちゃ。
ふふ、
私ここに来た時も急だったわね。
…まさか帰るのも急になるなんてね。」
「ファミリアっ…、
そう、か。帰るのか。」
「…、うん。
元気でね。シン。」
二人は見つめ合った。
「…あぁ、もう行くねっ。」
ファミリアはそう言うと、ロンの所に行き跨った。
「ファミリア!」
シンは走って向かうとファミリアを抱きしめた。
「シン…、」
「ファミリア…。
ごめん。
好き"だった"よ。」
シンがそう言った後笑顔を見せる。
「シン…。」
「ロン、行って…!」
シンはファミリアを離すとロンに言い放った。
ロンはファミリアの顔を見やり、仕方なく出発した。
「ファミリア…。」
ファミリアの顔を思い出すと、胸が締め付けられる。
でも…。
…ごめん、ファミリア。
シンはそう思う他なかった。
「シン…これでよかったの?」
リンが隣に並び、シンの見ている方に視線を送る。
「リン…。
俺は怖いんだ。この平和が終わるのは。
自分でも情けないって思うけど、
俺にはこの日常が必要なんだ。」
顔を歪ませるシンにレンとカミーユも寄り添う。
「シン…。
…うん。
さぁシン、温かい飲み物でも飲みましょうか。」
「シン兄ちゃん、今日はうんと甘いのにしようね!」
「わしの歯も生え変わったことだし、それをお菓子にしよう」
「…ありがとう、リン、レン、カミーユ。」