実は××な私ですが〜冷酷部長の籠の中〜
「おい田崎ー!部長が呼んでたぞ!」

「はい!今行きます!」

この呼び出しはきっとあれだ。 

急足で部長室へと向かう足が、いつもよりも重たく感じる。

「失礼します、田崎です」

「入れ」

恐る恐る中に入ると、デスクに頬杖をつきながらこちらを見ている部長が座っていた。


「その顔は、なんで呼ばれたのかわかっている様子だな」


「‥はい」


心当たりがあるとしたら一つしかない。


「昨日の企画書のことですよね‥」

部長はため息をつきながら書類を手に取り、私に差し出した。私が昨日提出した、カップル向けの旅行プラン案だ。

「わかっているなら、なぜこれで出した。お前だって恋人くらいいたことがあるだろう。こんなプランで楽しめると思ってるのか?」

部長の話声から私に呆れていることがわかる。

「いえ‥」

‥そんなことをいわれても、"普通の人"の考えることなんて私にわかるはずがないじゃない。

「3日やる。作り直せ」

3日!?そんな短期間でまた一から考えろなんて、鬼か。

「あの、さすがに3日は‥」 

「やれ」

「‥はい」

部長命令だとしても、パワハラで訴えてやろうかこの人。

「俺が一緒に考えてやる」

「‥はい」

‥‥はい!?
あれ、今部長一緒に考えてやるって言った?つい流れで入って言っちゃったけど、聞き間違い!?

私がもんもんと考えてる間に、部長は私のそばまできていた。

この人、近くで見るとほんとにかっこいいなぁ‥

部長は容姿は完璧で仕事も出来る人だけど、人を褒めることはしないと社内では有名。そしてダメ出しは容赦ない。その容赦なさに何人もの人たちが辞めていったのを私は見てきた。

見てきたから、目をつけられないように、怒られないようにやることはしっかりして息をひそめてきたから、部長とあまり接することはなかった。だから顔をしっかり見る
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