ココロとセツナ
会いたかった
「申し訳ございませんでした。ヒジリ様」


神社の本殿の一室。私は、兄の目の前で土下座をしていた。

兄の爽は、深いため息をついた。

「マナ、もう土下座はいい」

私は顔を上げた。

「お前のやりたいようにさせていたのは、俺だ。少々手助けもしながらな」


高校教師になってみたり、神社の宮司になってみたり。

「時を刈る話、『紫』の海斗にしたの?どうして?」

「どうしてかな」

兄は私に手招きをして、こう言った。


「海斗を1つにしたらもう、不死鳥には二度と戻れないぞ」


「はい」




兄は目を閉じ、小さく呪文を呟いた。




光の渦に飲み込まれる。



導かれる。




色が散らばって、1つになって、また散らばる。



廻る。


まるで一定の、法則があるかのように。


すごいスピードで動くようにものもあるが、ほとんど動かないものもある。


ここは無数に存在する、時の輪の中。


兄が作り出した世界。


私は1つのドアの前に立った。


「彼の部屋だ。俺は、家まで送った事があるからな」


私は息を飲んだ。


「しかしアイツ、相当な方向音痴だな」


兄は思い出して、笑った。


「会っておいで」


私は、ドアを開けた。
< 12 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop