あまい・甘い・あま~い香りに誘われて
私たちは制服の上にアロハシャツを着て男子はハットをかぶり、女子はプルメリアやハイビスカスの髪飾りをつけた。教室にはハワイアンソングが流れている。

文化祭一日目は生徒で楽しみ、二日目は父兄や外部の人が参加できる。

クラスで一番のイケメン虎太朗は、教室の入り口でお客さんの呼び込み担当になり、次々と女の子たちが来店して、嬉しい反面私はモヤモヤしていた。

一緒に写真撮ろうよなんて声までかかっているのが聞こえて、余計に私はやきもきしていた。

そんな虎太朗を見ていたくなくて、私はデザートを盛り付ける裏方にまわった。
 
「ダーリンモテモテじゃん。アロハにハットメチャメチャ似合うもんね。ダントツでかっこいいわ晒名。」
「……」
「妬かない妬かない。愛想振り撒いてるけど葵一筋なんだから(笑)あとで葵のフラダンスでメロメロにしてやりなさいな。」
「それより大好評だよ。葵が頑張って作ったケーキ。」

「そうそう。どこのケーキやさんから買ってきたの?なんて聞かれたもん。葵の手作りだって話したら驚いてたよ。」
「ほんと!」

こっそりお客さんを盗み見ると、写メをとったり、口々に美味しいって声も聞こえて、モヤモヤから心が晴れて幸せそうにケーキを口にする人たちを見て私も幸せな気持ちになった。
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