天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
(!?)
再び大きく風が唸り、突風となって私を煽った。
肩上で切り揃えた髪が顔の前に靡き、体勢がぐらつく。
遥か眼下の固く痛々しそうな地面が眼に入る。
(う、ゎ…!)
その時私は初めて感じたんだ。
恐怖を。
今にも宙から突き放されて、真っ逆さまに堕ちていく、そしてその刹那この魂を、肉体を失い元に戻ることは決してない恐怖を。
私は無意識に呟いた。
「恐い…」
「え…?」
「恐い…恐いよ!先生!!」
「しっかりしろ!大丈夫だ!」
「先生!!恐いよ!!」
「大丈夫だ!
だからいいか?落ち着いて俺の話を良く聞け」
先生の泰然とした低く良く通る声に私は素直に頷いた。
「まず右手で俺の手を取れ。それから左手はそっちのフェンスを掴むんだ」
先生が目一杯こちらへ手を伸ばした。
私はその手を握り、反対の手でフェンスを掴んだ。先生が私の手をしっかりと握り返す。
「良し。良く出来たぞ。
次に左足から順に足を上げて床に乗せるんだ。そしたらゆっくり立ち上がれ」
私は言われた通り左から足を地面に付けるも脚が震え、上手く立ち上がれない。