天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
「無理!先生、無理だよ!」
「大丈夫。言ったろ?俺は絶対に手を離さない。俺を信じろ」
先生は私の手を握り締めた。
私もその手をぎゅっと握り、怯えながら立ち上がろうとする。
突風がまた私を襲う。
「きゃ!」
「落ち着け、大丈夫だから!俺が付いてる!」
風が止むまで動けずにいる私を先生はじっと待ってくれて、その間、
「大丈夫だ」
「ゆっくりでいい」
と励まし続けてくれる。
おぼつかない脚でようやく立ち上がると、
「この隙間から出たんだな?出たなら入れるだろ?大丈夫、もう少しだ」
と先生は微笑んだ。
私はそろりそろりと隙間に近付き、身体を滑り込ませる。
「やった!」
足腰の力が抜けて崩れ落ちる私を先生が抱き留める。
「せんせ…」
「良くやったな、お前!」
背中に回された先生の腕にぎゅっと力が籠る。
私は先生の胸に顔を埋めた。
「恐、かった…」
「良く帰ってきてくれたな!ありがとう!」
先生は私を抱き締めたまますっかり乱れた私の髪をくしゃくしゃと撫でる。
そうして私たちは水道設備とフェンスに挟まれた狭いスペースでしばらく抱き合っていた。