天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
花舞う春
 4月。私は3年生になった。


 と言っても相変わらず何の変哲もない変わり映えのしない毎日。

 ただ昼休みの屋上で浴びる陽の光が日に日に高く鮮やかになっていくのだけが、唯一私の日々の変化だった。


 それと。

 私たちの学年の体育の担当が仁科先生になったことくらいだろうか。



「1・2・3・4!」

「5・6・7・8!」

 柔軟体操の掛け声が響くグラウンド。


「よし!集合ーッ!」

 仁科先生の声に生徒たちが集まる。

 その中に私はいた。


「ハンドボールのルールは既に前回教室で説明したけど、今日からは実技で練習していくことにします。今日は基礎的なパス、キャッチ、シュートから。ちょっと手伝って」

 運動が得意なバレー部の三浦さんを呼ぶと、何か指示を出した。


「じゃちょっとやってみるから」


 センターライン辺りからゴールに向かって走る先生に三浦さんがパスを出す。
 ジャンプしてそれを素早くキャッチした先生は、2、3歩走りまた直ぐ三浦さんにパスを戻す。
 更に走り続ける先生に三浦さんがもう一度パスすると、先生はそれを一度だけドリブルさせた後、ゴールに向かって高く跳躍する。
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