天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 宙で大きく振りかぶるや、次の瞬間先生の手の中から勢い良くボールが放たれた。
 パシッと音を立ててボールがネットを揺らす。


(!!)


 長い四肢を駆使して見事なジャンプシュートを決める先生に私が眼を見張ると、

「うゎぁ…」

「凄い…」

みんなの間からも感嘆の声が漏れた。


「やっぱ仁科先生カッコいいー!」

「だよねー!」

 女の子たちがひそひそ言う声が、きっと先生の耳に聞こえているだろう。

 ボールを拾って振り返る先生はどこか得意気に見える。


「と、まぁこんな感じでやってもらうわけなんだけど」

「えーっ!無理だよ先生!」

「自分でやるより先生の見てる方が良いっ!」

「俺もそうしたいとこなんだけどな、それじゃ授業になんねぇから。

 ま、しょーがねぇ。とりあえずまぁ、二人一組でパス練習から」


 先生の合図でみんなが組を作りつつ、広いコートに広がる。


「青海」

 茉莉ちゃんが声を掛けてくれて、私は茉莉ちゃんとパス練習することにした。


「仁科先生、人気あるね」

「…だね」

「青海もカッコいいと思う?仁科先生」

「えっ…」


(うーん、どうかなぁ…)


『俺で良けりゃ話聞くからさ、戻ってこいよ』

『青海のこと、守るから』


 即否定出来ないのはなんでかな…


 そこにクラスの子たちと先生の会話が聞こえてくる。

< 18 / 69 >

この作品をシェア

pagetop