天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 青い空。
 頭上高くには長く延びる飛行機雲。

 葉桜の香りの柔らかい春の風に撫でられて私は思わずごろんと寝転がる。

 今日も昼休みの屋上はのどかだ。


(気持ちいいなぁ…)



 瞳を閉じても春の陽射しは目映くて、夢のようにほんのり明るい世界が瞼の裏に映る。


 暖かな空気に包まれ、うつらうつらとしかけた時、


「こんなとこでよくそんな無防備なカッコしてられるなぁ」


ふと眼の前が陰り、声がした。

 その声に不意に胸の中があったかくなるのを感じる。


「先生…」


 眼を開けると、思いがけず先生が至近距離で私を覗き込んでいた。


「!!」

「ちったぁ危機感持て。女子なんだから」


 先生の黒い瞳に私が映る。


(あ…)

 それが少し嬉しいと、うっかり思った。


 私は先生を避けて身体を起こしながら、悟られないように淡々と返す。

「どうせここ来るの、仁科先生だけだし」


 淡々と返したつもりだったのだけど…


「え?何それ?俺になら何かされても良いってこと?」

「!!違っ…」


 もちろん、そんな意味じゃない。


 けど。

 不意打ちの突っ込みになぜか動揺してしまう。

 何でだろう?先生には敵わない。
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