天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
「ただいまぁ」
玄関を開けると大きなサイズの白のスタンスミスが綺麗に揃えて置かれていた。
それを見て私は小さく溜め息を吐く。
リビングに入ると、ソファに掛けた靴の持ち主が
「おかえり、唯ちゃん」
とにこにこ挨拶した。
「…晴くん、今日は休みなの?」
「うん。代休でね。使わなくなったベビーバスとかおくるみとか、預けさせてもらいに来た」
「ふーん…」
私は興味なく相槌だけ打つ。
そのままリビングとキッチンの間の階段から自室のある2階に上がろうと向かいかけると、
「お義母さん、そろそろ帰ります」
と晴くんがキッチンの母に声を掛けた。
「あらもう?」
「はい、麗ちゃんと瞬が待ってるんで」
「そう。ありがとうね」
「お茶ご馳走様でした」
晴くんが立ち上がる。
「唯ちゃん、またね」
私は晴くんの顔も見ずに会釈すると、階段を上った。
部屋のドアに手を掛けた時、階下から母の声が聞こえた。
「晴くんはホント良い旦那さんね。流石、麗ちゃんが選んだだけのことあるわ」
「……」
私は気に留めないふりをして部屋の扉を開けた。
* * *