天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした

「……

 …豊島麗」

「えっ?とよしま…?」


「…豊島麗が…私の姉です」


「……」

 先生は大きく眼を見開いてぽかんと私の顔を見ている。


(先生の言いたいこと、分かってるよ…)

『お姉ちゃん』に似てないって─


 見られたくなくて、私はふいと顔を背けた。


「はー、そうかぁ、全然分からんかったなぁ」


 もう言わなくていいよ、分かってるから…

 無意識に身を固くした私に先生がわざわざ言う。


「お前ら姉妹あんま似てないのな」

「……」


 そんなの、私が一番良く分かってる。

 私はぎゅっと唇を噛んだ。


「そっか。良い姉ちゃんがいて良かったな」

 先生の大きな掌が私の頭にぽんと置かれた。


 それも何十回、何百回言われてきた台詞。その度に笑って見せてきた。


 でもそれを先生にまで言われて。


(もういいよ…)

 聞き飽きた。


「…全然良くないよ」


 全然良いことなんてない…


 それを鈍感な人間は純粋に不思議そうに訊く。

「え?なんで?」


 『なんで?』?─

 むしろ『美人でスタイル良くて優しくて、もうハンパねぇマジ女神で、めっちゃ綺麗なイイ女』の妹であることをどうして良いと思えるんだろう─


「なんでか説明してあげようか」


 私は顔を上げて、先生を真っ直ぐ見た。 

「!」


 眼が合った瞬間の先生の表情を私は忘れることがないと思う。

        *   *   *
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