天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 市内で最もレベルが高いと言われる県立高校に進学した姉は体操部に入部した。
 勉学とスポーツを掛け持ちしながらも姉はいつも成績上位10位までに名を連ね、また、体操の方は県の強化選手に選ばれた上、生徒会役員にまで推薦され尽力していた。


 一方で私は─


「唯は掛け算も出来ないの?こんなの麗ちゃんは1年生の時に出来てたよ」

「唯は字も絵も下手っぴだねぇ」

「本当に唯はどんくさくて。麗ちゃんにはこんな心配したことないのに」



 それでも、そんな私にも姉は優しかった。


「算数、教えてあげようか?」

「一緒にクッキー作ろうよ!」

「唯ちゃんにこのお洋服あげるね。きっと似合うと思うの」


 小学校5年生の4月、授業で書いた自己紹介カードの自分の長所という欄に私が書いた言葉は

『すてきな姉がいることです』。


 私自身には自慢出来るようなことは何一つなかった。

 けれど私には姉がいた。姉が私の唯一の自慢だった。

 それでも良かったんだ。

 姉がいたから。

           *
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