天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
(お姉ちゃんが先生をやってる学校に行きたいなぁ…)
姉の勤める学校は、創立100余年というこの界隈では有名な伝統あるお嬢様学校で、とは言え、近年は進学に力を入れていて、名門私大や国立大学、医学部生なども輩出している中高一貫校だった。一貫校と言っても若干は高校からの募集があるのだけれどかなりの難関で、私の成績では簡単には合格出来るものではなかった。
それでも諦めたくなくて必死に勉強を始めた私に、中3の春、姉が連れてきたのが晴くんだった。
「高校の時の生徒会の後輩の豊島晴《とよしまはる》くん。唯ちゃんの家庭教師をお願いしたら良いと思うんだ」
「初めまして。君が唯ちゃん?」
タッターソールのシャツにチノパンと育ちの良さそうないでたちの晴くんがにっこり微笑む。柔らかな雰囲気が、最近癒し系だとドラマやCMで引く手あまたの俳優さんに似ているな、と思った。
その晴くんが人懐っこそうな一重の眼でじっと私を見、それからひとつ頷いた。
「やっぱ姉妹だね。麗先輩に似てる」
「え…?」
晴くんはもう一度ふわりと微笑んだ。それから少し頬を紅くしてふっと笑って言った。
「可愛いね」
「……!」