天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
「唯ちゃんはね、自分で思ってるよりずっと優秀なんだよ」
晴先生の言葉は魔法のように私に自信をくれた。
私は今までよりもずっとずっと勉強が好きになったし、やればやるほど分かるようになって、そして出来るという確信になった。それと同時に自分を好きになっていく私がいた。
「唯ちゃんは偉いね」
そう言って頭を撫でてくれる、晴先生の掌が好きだった。
優しい声も穏やかな笑顔も、それらはいつしか私の胸を温めて、そして彼に逢う時間が愛おしくなった。
晴先生に会ったばかりの頃、姉に訊ねたことがある。
「晴先生はお姉ちゃんの、その…彼氏さんなの?」
姉は「えっ?」という顔をした後、少し笑って答えた。
「まさか。晴くんは私より年下だし、そんなわけないでしょ」
だから、何の問題もないよね?気付いたこの気持ちに名前を付けてしまっても。この気持ちを、素直に認めてしまっても。
夏休み、晴先生と姉と3人で行った気分転換の花火大会で、はぐれないように私の手を引いてくれた。
大きく温かな手の感触にときめいた。そして気付いてしまった。
(これは…恋だ─)