天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 合格発表の日は期せずしてバレンタインデーで。

 合格していたら、この日夕方にうちに来てくれるという晴先生に告白しようと決めてチョコレートを買った。
 小さな箱だけれど、私の手の届く精一杯の大人っぽいベルギーのチョコレート。この中に私の想い全部託して。


 発表当日、ホームページで確認すると、はたして私の受験番号があった。

「! あった!!」

 すぐに晴先生にアプリでメッセージを送ると、

『おめでとう!お祝いを買って後でお邪魔するね』

と返ってきた。


 晴先生が来てくれる。私のために。

 そして私は晴先生に伝えるんだ。


(貴方が、好きです)─



 空に一番星が上る頃。晴先生は大きなケーキを持って来てくれた。


「先生、ありがとうございました。この子が合格出来たのは晴先生のお陰です」

「いえ、全ては唯ちゃんの頑張りの賜物ですよ。唯ちゃんは素直で努力家なのでそれが勝因だと思います」

 母の言葉に先生はそう言った。


 昼間合格を伝えた時も母は私への労いは特になく、「まぁ、良かったわね!晴先生のお陰ね」と言った。「これからは麗ちゃんが傍にいるから安心ね」とも言った。

 私の合格を純粋に『おめでとう』と、『唯ちゃんの頑張りの賜物』だと、手放しに褒めてくれたのは晴先生だけだった。
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