天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 程なく姉が帰宅した。

「おめでとう、唯ちゃん!頑張ったね」

 姉が私の手を握ったところで母の言葉が遮った。


「何かお話があるんでしょう?」


(?)


 晴先生と姉が目配せする。

 母が二人にリビングのソファを勧めた。二人がソファに掛けると、L字に置かれた一人掛けソファに母も座り、釣られて私もオットマンに腰掛けた。

 また晴先生と姉が眼を見合わせ、微笑み合った。
 いつにも増して姉が可愛らしく色っぽくて、私はなぜかぞくりとした。

 晴先生が母に向き直る。


「お義母さん、僕たち結婚することにしました」


(え…)


 眼の前にある全てのものが一瞬にして色を失った。晴先生の上品な横顔も膝に置かれた手も身綺麗なカーディガンと細身のスラックス姿も、隣に座る姉の笑みも長い髪も、天井もフロアも部屋の調度品も。


(『結婚する』って…どういうこと…?)


 回らない頭でなんとか理解出来たのは、高校時代から晴先生が姉を想っていたこと、去年の初めに二人が再会したこと、夏の終わり頃から交際を始めたこと、この春から晴先生が就職するのを気にいっそもう結婚してしまおうという話になったこと。
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