天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 それもそのはず。彼は実はうちの学校の正規の職員ではない。育産休中の女性教師の代理で来ている。
 本業はスポーツクラブのインストラクターで、ベテラン体育教師の山本先生が知り合いのスポーツクラブに頼んで連れて来たらしい。

 そのことはまぁ公にはなっていないのだけど。



「あれ?」


 仁科先生が私の姿を見つけて声を上げる。


「何やってんの、お前。ここ、立ち入り禁止だけど?」


 面倒臭いことになったな、と私は胸の内で舌打ちした。
 とりあえずここは賭けに出よう。


「先生こそ何やってるんですか?ここ、立ち入り禁止だけど?」

「え?俺?」


 そう言うと先生はにやりと笑う。


(?)

 そして先生はこちらに近付きながら、紺のウィンブレパンツのポケットから何かを取り出した。


「俺はこれ」

「煙草?」

「そ」


 先生は私の隣まで来ると、開いたパッケージから手慣れたように1本取り出す。


「職員室の裏に喫煙スペースあるでしょ?そこで吸えば良いのに」


 私の貴重な幸せな時間を誰かに邪魔されたくない。
 その気持ちがありありと言葉に出た。


 が、先生はそんな私の棘っぽい言葉を気に留めるでもなく返す。


「えー!だってあそこ、山本先生もいるんだもん。落ち着かないじゃん」

「知らないよ」


 先生は煙草に火を付けて、私の隣に座り込む。

「煙たい?」

「うん」

「そうか」

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