天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 先生はふっと笑ってこちらに戻ってくる。それから私に右手の小指を差し出した。私はそれに自身の指を絡める。


「指切りげんまん…」


『俺ら、似てるよな』

 意味なんてない。
 どうせこの人も姉が好きなんだ。

『俺で良かったら、力になるから』

 指切りなんて意味なんてない。
 きっとまた姉の気を惹きたいだけ。きっとまた利用されるだけ。きっとまた傷付くだけ…

 分かってる。分かってるのに、その掌の温度が離れていくのが切なかった。その指先の小さな温もりでいいから欲しかった。


「嘘吐いたら針千本飲ーます」


 どんなに傷付いても、多分私は…

 信じてみたかった─


「指切った」


 小指と小指が解ける。


「あと10分くらいしかねぇけど、保健室で目冷やして、6時間目は授業出ろよ?」

「…うん」


 どうせ今更何の価値もない。
 傷付いたってどうせ平気。

 だから今は…


 今は私の傍にいて─


        *   *   *
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