天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
追憶〈side Sousuke〉~ 銃声 *
 もう10年前になる。

 16歳。

 俺は地元の中堅の私立高校に通うどこにでもいる高校生だった。
 勉強は得意とは言えなかったけれど子供の頃から運動は得意で、国立に行けるほどの強豪チームでもなかったがサッカー部のレギュラーでそこそこ活躍させてもらっていた。彼女はいなかったけれどそこそこモテて、学校は1学年11クラスもあるマンモス校だったけれどそこそこ友達もいて、いつも連んでる仲間がいて、他のクラスに幼馴染みもいて、毎日飯が旨くて、それなりに退屈せずそれなりに幸せに暮らしていた。


 あの日は秋たけなわの高い空と色付く木々が気持ちいいはずの日だった。


「近代化に伴ってイギリスの…」

 4時間目、2年9組の教室では担任の岡村の世界史の授業が行われていた。

(腹減ったな…)

 俺は欠伸を噛み殺しながら外を見る。

 絶好の部活日和。

 の前に、早く昼飯食いたい…


(まだ時間半分くらいあんな…)

 ちらっと腕時計に視線を落とす。

 早く終われ、終われ…
 腹減ったら頭に入るもんも入んねぇよ。ってか、飯食ったらまた眠くて頭に入んねぇけど。


 銀杏の鮮やかな黄色が舞い落ちる。穏やかな秋の昼日中。


 穏やかな─


 そう、その瞬間までは─

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