天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 後日、3名の生徒が亡くなったことを聞かされた。

 その内の一人が匡だった。

 あの日の轟然とした銃声の最後の一発は匡自身が自らを貫いた音だった。


 匡は高校に入ってからクラス内でいわゆる『いじめ』に遭っていたらしい。
 その陰湿ないじめの詳細と犯人が遺書に記されていた。死んだ残り二人の生徒はその遺書にしたためられた人物だった。
 使われた銃は射撃競技に使うか何かのものを親戚の家から持ち出したのだそうだ。

 しばらく学校は休校になった。

 数週間後、クラス替えが行われ学校が再開したが、学校を辞める者が何人もいた。1組の担任だった数学教師も学校を去った。
 残った者も登校拒否になる者やそこまでは行かなくても休みがちであったり、カウンセリング室への登校、病院通いしながらの通学という者も多く、どの教室も常にがらんとしており、活気がなかった。


 そんな中俺は毎日普通に学校に通いこれまで通りの生活を送る少数派だった。
 毎朝決まった時間に起きて登校し、授業を受け、放課後は部活に参加し、帰宅してホームワークをこなし、眠る。

 あの惨状を実際に目の当たりにした、それも幼馴染みを喪い、その幼馴染みが惨劇の張本人だったという人間にもかかわらず、なんとタフな精神なんだろうと、皆が思っていたに違いない。そのくらい俺は何事もなかったように日々を送っていた。

 いや、そう見えていたと思う。
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