天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 でも実際の俺は…

 あらゆることに無気力だった。
 好きだった部活も打ち込むことはなくなった。親しかった級友たちとも心底笑い合うことはなかった。本気で腹が減ることもなくなった。

 いわゆる『心を殺して』生きていたと思う。


 いろんなことを考えないようにしていた。気付かないことにしていた。

 でないとふと我に返った瞬間、思い出してしまう。

 あの日の異常な光景と、そして何よりも匡のことを。


 あたかも赤い海に浮かぶようだったあの制服姿はやはり匡だったのだろうか。
 もしもあの時匡を抱き起こしていたら、匡は助かったのではないだろうか。
 公園でサッカーをしていた時、敵のディフェンスを避けきれず転んだ匡に手を貸したあの頃のように、「全然平気!」と笑いかけてくれたんじゃないだろうか。

 いや、そもそもそこまで思い詰めていた匡をどうして俺は気付いてやれなかったのか。助けてやれなかったのか。

 もっと匡の傍にいれば匡の心の支えになれたかもしれない。ともすればいじめも起こらなかったかもしれない。

 そう上手くはいかなくとも、アイツが銃を手にした時、俺の顔を思い浮かべて踏みとどまったかもしれない。
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