天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 空の上はきっと暖かで、明るく光に満ち満ちて、私でも輝いていられるんじゃないか…?


 フェンス沿いにゆっくりと歩く。
 誰もいない屋上は私の思考をゆっくりと、でも確実に動かしていく。

 どうしたら天使のきざはしを上れるのか。

 どうしたら大いなる太陽の恩恵にいつも与かれるのか。


 真ん中付近にある水道か何かの設備に阻まれて私は足を止める。

 私は設備を囲むフェンスを見上げた。


(あ…)


 屋上の四方をぐるりと囲むフェンスにはねずみ返しが付いているけれど、設備のそれには付いていない部分があった。

 つまり…


(上れるんだ?)


 設備のフェンスの中に入れば、そこからは少し狭いけれどフェンスの隙間を抜けて屋上を囲うフェンスの外に出ることが出来そうだった。


 恐いという気持ちよりも

(出てみたい!)

という気持ちが勝った。迷わずフェンスに足を掛ける。

 予想以上にそれはするすると昇ることが出来、簡単に中に入ることが出来た。


 その時上空を吹く風に雲が切れて、青空が大きく空に覗いた。

 陽光が私を導くように広く射し込む。


(あぁ…)


 きざはしの上に細く虹が立つ。

 いざなわれるように私はぎりぎりの隙間をぬって、フェンスの外に出た。


「綺麗…」

 感嘆の溜め息が漏れる。
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