ピュアダーク
「やっぱりパトリックだ。その笑顔は小さい頃のままだね」

「僕はあのときから何も変わってないよ。ずっとずっと君の事思ってた。無理やり連れて行かれたあの日から」

 ベアトリスの脳裏にパトリックが手を差し伸べて必死に叫んでいた姿がよぎった。

 パトリックの手を見れば、あのときよりも逞しく、筋肉がついて男らしくなっていた。一歳年上なだけなのにベアトリスよりも幾分も大人に見える。

 それに比べて自分は何も成長してないとベアトリスは急に恥ずかしくなってしまった。

 パトリックはベアトリスの手をそっと握った。

 子供のときは小さすぎて自分の思うように行かなかった無念をこの時晴らすように伝えた。

「ベアトリス、好きだ。もう離さない」

 真剣な瞳。

 パトリックの気持ちがストレートに伝わってくる。

 それが自分に向けられてると思うとベアトリスは落ちつかなくなった。

 ベアトリスの心はパトリックの気持ちを受け入れられない。

「ごめんなさい、パトリック。正直あなたのこと忘れてたし、それに子供の頃仲良かったかもしれないけど、今の私はあの時とは違う。だから……」

 全てを言い終わる前にパトリックが突然笑い出し、ベアトリスはきょとんとしてしまう。

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