ピュアダーク
「いえ、あなたが私に口を挟める義理じゃないと思いまして。それだけ言いたかったんです」

 パトリックがアメリアの弱みを握っているような口ぶりにアメリアは黙り込んだ。

「ちょっと、二人して一体何を話してるの? さっぱりわからないわ」

 ベアトリスが、二人のやりとりをピンポン試合の玉を追いかけるように見ていた。

「あなたに反対されようと、そんなことはどうでもいいんですけどね。僕は素直にベアトリスが好きなだけです。必ずベアトリスのいい夫になれるように頑張ります」

 パトリックはガッツポーズを取り、その決意は背中の後ろから燃え滾る炎が見えてきそうだった。

 この男に何を言っても無駄だとベアトリ スは頭を抱えた。

 アメリアは慎重にパトリックを見ていた。

 優しそうで好青年風だが、計算したような相手を見透かす鋭い発言をする。

 かなり頭が切れるとアメリアはすぐに感じ取った。

 先ほどのパトリックの言葉にも半信半疑だがアメリアには心当たりがある。

 やっかいなものが来たとイライラが募った。

「それじゃ、僕がお二人を家へお連れしましょう。僕はちょうどいいときに現れたって感じですね」

 パトリックはベアトリスに同意を求めるように笑顔を見せた。

「いいえ、結構よ。あなたの世話にはならない」

 冷たくアメリアが断る。

「それじゃ誰の世話なら受け入れるんですか。あの男の助けだったら素直に受け入れるというのですか。先ほど病院から出て行くのみましたけどね。そう言えばあの時も居ましたね、あなたの側に」

 アメリアは目をそらす。

 半信半疑だと思っていたことが確信に変わった。

 ──この子はあのときのことを知ってる。リチャードのことも。だから私を試している。私の弱みを握ってるといいたいのね。

 アメリアはこの脅しで完全に出鼻をくじかれた。

 様子を見ようと大人しくすると、パトリックはすぐに空気を読んだ。

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