ピュアダーク
「ごめんなさい。僕はそういうつもりで言ったんじゃないんです。僕もベアトリスやあなたと係わりがあるということを判って貰いたかった。それだけです」

 ベアトリスは二人の会話についていけず、不満げな顔をしてると、パトリックが優しく肩を抱き寄せた。

「だってアメリアはベアトリスの大切な家族だろう。そしたら僕にとっても家族同然。お世話するのが僕の義務。ねぇ、ベアトリス」

 ごまかされたような、筋が通ってるような、やっぱり訳のわからないような、パトリックの言葉と行動に、ベアトリスは自分の理解力に問題があるのかさえ思ってしまう。

 さっぱり訳がわからないが、パトリックとアメリアの間には何かあるというのだけは感じていた。
「わかったわ。あなたの親切を有難く受けるわ。ただし、あなたをベアトリスの婚約者だと認めた訳ではないから」

 アメリアが素直に聞き入れる。

 この状態では何もできないとパトリックの出方を少し見て、それからどうするか考えるつもりでいた。

「ええ、今はそれでいいです。いつかきっと僕のよさがあなたにもわかってもらえるときが来るでしょう」

 自信たっぷりにパトリックは答えた。

 話の内容についていけなかったが、厳しく容赦しないアメリアの気持ちをあっさりと変えてしまったパトリックに、ベアトリスは驚いた。

 パトリックを見つめれば素直に嬉しいと喜んでいる。

 ミステリアスな部分もあるがベアトリスはこの笑顔が憎めなかった。

 寧ろ好感をもち、心強いとさえ思っていた。

 特にこんなにいろんなことが沢山一度に起こってはベアトリスも誰かに甘えてみたいという気持ちが芽生える。

 懐かしい幼なじみのよしみもありパトリックに肩を抱き寄せられて嫌じゃないと思える自分がいた。

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