ピュアダーク
「ちょっと、人んちで勝手に料理しないでよ」

「いいって、いいって、そんなに僕に気を遣うことないんだから」

「どこが気を遣ってるっていうのよ。呆れてるんでしょ」

 そうしている間にもさっさと料理していた。パトリックに何を言ってもことごとくいいように解釈されてペースに飲み込まれてしまう。これほどの強引さはどこから出てくるのだろうとまじまじ見つめるが、またそれがパトリックの思う壺だった。

「あっ、僕に惚れた?」

 もう返す言葉もでず、すきにすればいいとあきれ返ってしまった。

 パトリックはそんな事もお構いなく、思うままに陽気に振舞っていた。

 またその笑顔はどんな状況でもベアトリスの心を軽くしてくれた。

 そしてふと気がついた。自分らしさのままで気兼ねなくなんでも言えることを──。

 パトリックの前では何でも思ってることが言えた。

 それがすごく心地よく、ベアトリスからも自然の笑みがこぼれる。

「やっぱりベアトリスは笑った方がかわいい。君もその笑顔は昔と変わってないね」

 ベアトリスは照れくさくなった。そしていつしか自然に一緒に料理をしていた。

「できあがり! それじゃこれ、僕がアメリアのところに持っていくから」

「あっ、それは私が…… 」

「ベアトリスは、悪いけど、そこにあるレモンを絞っといて」

 トレイに食事を載せ、パトリックはベアトリスをかわして強引に持って行った。

 ベアトリスは仕方なくレモンを半分に切り、しぼり器で絞る。

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