ピュアダーク
 ──ベアトリスに本気で惚れている……か。へぇ、ヴィンセントはこんな綺麗なお嬢さんよりも心を奪われる女性が他にいるのか。気になるね。しかもこのお嬢さん、ベアトリスって言う子のことを相当嫌ってるもんだ。絶望、嫉妬、憎しみが入り乱れてる。面白い。これは面白い。ちょっと影を仕込んでおくかな。 次、ベアトリスとかいう女の子に会ったときどうするか見ものだ。ヴィンセントもびっくりするだろうよ。

 コールは席を立ち、コーヒーカップをゴミ箱に捨てた後、顔をあげ、ジェニファーにフォーカスすると、目を見開いて一瞬焼き付けるように見つめた。

 コールの瞳が赤褐色に染まり、その後一体の影が、蛇が床を這うように現れ、すっーと融けるようにジェニファーの足元から体の中へ入っていった。

「程ほどに遊んで、あとで戻って報告してくれよ」

 そう呟くとコールは店を出て行った。

 ジェニファーは影を仕込まれたとは知らずに、ベアトリスへの憎しみを増幅させていく。

 コールが仕掛けた影はひっそりとその時がくるまで出番を待っていた。

 そしてベアトリスが、自分が居場所を突き止めたいホワイトライトだということも、コールはこの時まだ気がつかないでいた。

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