ピュアダーク
 我武者羅に走り続け、闇雲に手当たり次第を探し続けるベアトリスに対し、パトリックは光が示す方向を静かに歩いていた。

 それはベアトリスが向かった方向と全く逆を示している。

 住宅街を離れ、大通りに面した道路にたどり着く。

 そしてバス停で男が一人ポツンと立っている姿が見えた。

 パトリックの持つ道具はそこを示し、そしてそいつはバスを待っていた。

「ダークライトが律儀にバスに乗って行動とは笑わせるね」

 パトリックはデバイスの蓋を閉め、ポケットにしまいこみながら側まで近づく。

「パトリック、久しぶりだな。お前がここにいるとはな」

「君が派手な行動をとってくれたお陰でベアトリスの所在地がわかったんだ。礼を言うよ、ヴィンセント」

 不自然な学校の崩壊。テレビに映りこんだベアトリス。ヴィンセントが絡んでいることはパトリックにはすぐに見通せた。

 ヴィンセントは苦虫を噛んだような顔をした。

 何もかも全てが裏目に出てしまった軽はずみの自分の行動が腹立たしくてたまらない。

 拳を握り手を震わせていた。

「言いたいことはそれだけか」

「いや、他にもある。お前、ベアトリスの前で血を見せたのか」

「なんのことだ」

「とぼけるな。忠誠を誓い、魂を捧げる。その証として自分の血を見せる誓いの血のことだ」

「だったら、なんだっていうんだ」

「いつどうやって、何も知らないベアトリスにそんなことしたんだ」

「彼女は気づいてないよ。俺は本気だったけど、彼女の前ではちょっとした遊び半分でごまかした」

「余計なことをしてくれたよ。彼女はおかしいと気づいてしまったよ。僕も成り行きで同じことをしてしまったからね。まさかそれに彼女が疑問を持つとは思わなかった。それよりもお前に先を越されてるとは…… 」

 パトリックは最後の言葉だけもごもごと小さく呟く。

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