ピュアダーク
「血ぐらいで、どうってことないだろう」

「それがあるんだよ。彼女はお前を探そうと走り出した。今も当てもなくその辺を探しているよ。おかしいと思わないか。血を見て血相を変えてお前を探そうとする。彼女はそれがきっかけで何かを関連させて気がついたことがあるに違いない」

 ヴィンセントの顔色が変わった。

 パトリックは嫌な予感を感じ、間違いであってくれと思いながら質問する。

「お前、まさかベアトリスの前で」

「ああ、見せちまったよ。俺の本当の正体。でもあの時彼女は気絶した。そのお陰で夢だと片付いた」

「一体何をしたんだ。自分の立場わかってるのか。この時期にベアトリスに変なことを勘ぐられたらやばいんだよ。アメリアも襲われ、要注意ダークライトが出回ってるときに」

「すまない」

「なんだよ、かなり素直に謝るもんだな。お前らしくもない」

「違うんだ、全ての責任は俺にある」

 ヴィンセントは正直に事の発端を話し出した。

 ライトソルーションを燃やすために何度も仕掛けをしたことから、影やダークライトを呼び寄せ、この時に至るまでベアトリスと接触したことを隠さず話した。

「それじゃ全てはヴィンセントが引き起こしたってことなのか。ただベアトリスに近づきたいがために」

「ああ、そうだ」

「僕と同い年のお前がベアトリスと過ごしたいために学年を一年遅らせ、そしてさらに欲望が深まって、この有様か」

 パトリックは憤ると体に力が入っていった。

 それはヴィンセントの行動にも腹を立てていたが、ベアトリスと離れていた間に、ヴィンセントが彼女と時間を共有していたことへの嫉妬の方が、どんどん膨れていった。

 ヴィンセントは一年遅らせていた間、パトリックは何年も飛ばして先を急いだ。

 ライトソルーションを与えられていたとはいえ、能力はノンライト以上でも、二倍速の速さで大学まで卒業するのは並大抵ではなかった。

 全てを勉強に費やし、ひたすら努力してきた。

 自分が側にいればこんなことにならなかったのにと、パトリックは悔しくてたまらなかった。

 ──こんないい加減な男など許せない!

 パトリックの拳がぶるぶると震えていた。

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