ピュアダーク
ベアトリスは自分の部屋に入ると、ドアを強く閉めた。
その音は家中に響き、苛立っているのがこの上なく表現され、パトリックも離れた部屋にいながら肩をもちあげるように身縮める程だった。
ジャガイモが入った袋が投げ捨てられるようにベアトリスはどさっとベッドにうつぶせに寝転んだ。
「もう、あの男の行動は本当に読めない。うっかりしてたら、本当に流されてしまう。これじゃ聞きたいことも聞けやしない」
ベアトリスはこの先が思いやられると思うと、手足をバタバタしてもがいていた。
ふと、パトリックが持っていた写真のことが頭に浮ぶと、がばっと体を起こして、クローゼットの中をごそごそしだした。奥から箱を引っ張り出し、中身を確認する。
「あった」
小さいが厚みのあるアルバムをベアトリスは掴んだ。
ずっと考えないようにしていた過去のことだったが、パトリックの持ってた写真を見たせいで昔が妙に恋しくなる。
「私が小さかった頃の写真が入ったアルバム。長いこと見てなかった。あの頃、これをみたらパパとママのこと思い出して泣いてしまうからって、自分で封印したんだった。誰もきっちりとした情報を教えてくれないまま、悲しみだけが残った事故だった。あのときの記憶はないけど、覚えていたらもっと辛かったんだろうか」
両親を失った心の傷は癒えたというより、それと向き合うことを許されてはいなかったために、考えることもせず悲しみを深く抱くことはなかった。
この時は懐かしい人に会う気持ちでアルバムを開いてみた。
だがページをめくってもめくっても頭に描いた二人の顔に対面できなかった。
「あれ、パパとママの写真がない。どうして」
最後までベアトリスはページをめくっていく。
そこには自分の小さかった姿が写りこんだ写真はあるが、家族と一緒に写っているものは一枚もなかった。
「まるでパパとママの存在すらなかったみたい。もしかしたら分けてどこかに入れ込んだのかもしれない」
ベアトリスは箱の中に落ちてないか探した。
小さい頃の持ち物や思い出の品は入っているが両親の写真はどこにもなかった。
思い違いで最初からもってこなかったのだろうかとも思えてきた。
おぼろげな記憶だけの両親の姿は写真なしではさらにぼやけていく。
このまますっかり忘れてしまうのではと思うとベアトリスの目から涙が溢れ出した。
ずっと考えないようにしていたことを後悔し、そして写真までもなくしてしまったことは両親がいたという事実までも抹消してしまった気持ちにさせた。
その音は家中に響き、苛立っているのがこの上なく表現され、パトリックも離れた部屋にいながら肩をもちあげるように身縮める程だった。
ジャガイモが入った袋が投げ捨てられるようにベアトリスはどさっとベッドにうつぶせに寝転んだ。
「もう、あの男の行動は本当に読めない。うっかりしてたら、本当に流されてしまう。これじゃ聞きたいことも聞けやしない」
ベアトリスはこの先が思いやられると思うと、手足をバタバタしてもがいていた。
ふと、パトリックが持っていた写真のことが頭に浮ぶと、がばっと体を起こして、クローゼットの中をごそごそしだした。奥から箱を引っ張り出し、中身を確認する。
「あった」
小さいが厚みのあるアルバムをベアトリスは掴んだ。
ずっと考えないようにしていた過去のことだったが、パトリックの持ってた写真を見たせいで昔が妙に恋しくなる。
「私が小さかった頃の写真が入ったアルバム。長いこと見てなかった。あの頃、これをみたらパパとママのこと思い出して泣いてしまうからって、自分で封印したんだった。誰もきっちりとした情報を教えてくれないまま、悲しみだけが残った事故だった。あのときの記憶はないけど、覚えていたらもっと辛かったんだろうか」
両親を失った心の傷は癒えたというより、それと向き合うことを許されてはいなかったために、考えることもせず悲しみを深く抱くことはなかった。
この時は懐かしい人に会う気持ちでアルバムを開いてみた。
だがページをめくってもめくっても頭に描いた二人の顔に対面できなかった。
「あれ、パパとママの写真がない。どうして」
最後までベアトリスはページをめくっていく。
そこには自分の小さかった姿が写りこんだ写真はあるが、家族と一緒に写っているものは一枚もなかった。
「まるでパパとママの存在すらなかったみたい。もしかしたら分けてどこかに入れ込んだのかもしれない」
ベアトリスは箱の中に落ちてないか探した。
小さい頃の持ち物や思い出の品は入っているが両親の写真はどこにもなかった。
思い違いで最初からもってこなかったのだろうかとも思えてきた。
おぼろげな記憶だけの両親の姿は写真なしではさらにぼやけていく。
このまますっかり忘れてしまうのではと思うとベアトリスの目から涙が溢れ出した。
ずっと考えないようにしていたことを後悔し、そして写真までもなくしてしまったことは両親がいたという事実までも抹消してしまった気持ちにさせた。