ピュアダーク
 その頃モールの中では、あの四人と離れた後、ベアトリスは早く帰りたくてパトリックの腕を引っ張って歩いていた。

 これ以上知り合いにパトリックと一緒に居るところを見られるのを恐れていた。

 両手に一杯荷物を持ったパトリックは、無茶にベアトリスに引っ張られ、歩き難そうにしている。
「そんなに慌てなくても、車は逃げないから。まあ、でも君に腕を掴まれるのは悪くないんだけどね」

 ベアトリスはパトリックの言葉に素早く反応して、パッと手を離した。

「そしたら先に行ってるから」

 ベアトリスはスタスタと出口を目指し歩いた。

 その時パトリックの持っていた護身用のデバイスがポケットの中でアラーム音を発する。

「ダークライトが近くにいる」

 パトリックは慌ててすぐにベアトリスの元へと走った。

 だが人が沢山いる場所では真っ直ぐ走れず、沢山の荷物が仇となり、体はすり抜けても荷物がすれ違う人とぶつかりすぐに追いつけなかった。

 ベアトリスは広い出口の一番右端のドアを目指して近づいていた。

 その時コール達も外から反対側の一番端のドア附近にいた。

 パトリックはその二人をガラスのドア越しから見て、すぐにダークライトと気がついて青ざめた。

 しかしその時、急ごうと慌てたために、まともに人とぶつかってしまった。荷物が手から離れて床に散らばった。

 このまま荷物を放り出してベアトリスに近づけば却って怪しまれると、慌てて荷物を拾うが、ベアトリスのシールドがダークライトにどう伝わるか気が気でなかった。

 本来ホワイトライトの存在をごまかし、隠れミノの役割があるが、近づきすぎたダークライトには身を守る力が働き攻撃体制のシールドとなってしまう。

 普通のダークライトなら近づくと体を焼かれるほどに苦しくなるが、かなりの力を持つダークライトの前では効果が薄れる。

 ヴィンセントの場合がそれで、近づけば攻撃を受けるが、本来の姿をさらけ出せばそれは通用しなくなる。

 攻撃性の弱いダークライトであれば、距離が近づいても感知されないこともあり、それはダークライトの能力によって様々の反応があった。

 ベアトリスと二人のダークライトの距離は近づきせずも遠いというほどでもない。微妙な距離感にパトリックは荷物を拾いながら焦っていた。

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