ピュアダーク
 ベアトリスたちが家に戻ると、居間のソファーにアメリアは座って二人の帰りを待っていた。

 コーヒーテーブルの上には大きなピザの箱、紙皿、そしてナプキンが置かれていた。

 テレビも付けられ、これからカジュアルなパーティでも始まりそうな雰囲気だった。

「アメリア、起きてて大丈夫なの」

 ベアトリスが心配して近寄るとアメリアは腕を一杯に広げて優しくベアトリスを包み込んだ。

「私は大丈夫よ。それよりもあなたのことが心配」

 普段口やかましいアメリアとは違って、気弱さが感じられる。

 ──アメリアってこんなに華奢で、か細かったっけ?

 ケガのせいだけじゃなく、心身から弱ってる感じがベアトリスには伝わる。

 心配しすぎて神経が磨り減ってるようだった。

 それを誤魔化すようにアメリアは明るく振舞おうとしていた。

「さあ、さっきピザが届いたところなの。温かいうちに早く頂きましょう」

「アメリア、ここで食べるの? しかもテレビ観ながら?」

 行儀作法にはうるさいはずなのにと、ベアトリスは驚いた。

「あら、ピザって言うのはこういう風に食べるのがおいしいのよ、ねぇ、パトリック」

 パトリックは突然話を振られて返事になってない声を発し、その場を慌てて繕う。

「えっ、あっ、それじゃ、僕、飲み物を持ってきます。ベアトリスは座って先食べてて」

 パトリックは台所に入り、今一度まじまじとピッチャーを見詰め、そして一滴でも無駄にできないと震える手でレモネードをグラスに注いだ。

 コールとかなりの接近をしてからライトソルーションに過度の依存をしてしまう。

 慎重にそれを持ってベアトリ スの前に息を飲んで差し出した。

 ベアトリスは紙皿を抱えてピザに無邪気にぱくついてるところだった。

 そしてパトリックからグラスを差し出されると、ピザをテーブルに置き、グラスを手にとって「ありがとう」と軽く口をつけて飲んだ。

 アメリアもパトリックも、レモネードを飲むベアトリスを思わず凝視してしまった。

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