ピュアダーク
「確かめてどうするんだい」

「わかんない。事実を突き止めて自分がどうしたいか、考えてもみなかった」

「なんだよ、それ。それじゃただの片思いなだけじゃないか。恋に恋して自分にいいように考えてるだけの恋愛ごっこじゃないか」

「でも、好きになるってそういうことじゃないの。あれこれ考えて、自分の中で膨れていく。結局は先の事も考えられず、思いだけが先走ってしまう。それが恋だと思うの」

「僕もベアトリスに恋をしてるよ。その気持ちは痛いほど分かる。だけど僕がいいたいのは、相手が君の事を考えていたら、僕と同じ行動をしてるということだよ。そいつは君の事なんとも思っていないんじゃないかってこと。それにもし真実を知ったとき、君は、その相手を変わらず好きでいられるのかい?」

 パトリックはつくづく自分が意地悪だと自覚していた。

 ヴィンセントが自分と同じ行動をしているのは知っている。

 自分と同じ思いを抱いてることも知っている。

 そしてその真実が何かも知っている。

 それを全て分かっている上で、ベアトリスを試すように悪役になっていた。

「今はうまく言葉に表せないの。まともに相手とも話せないし、ただその真実を知らなくてはいけないって、自分の使命を感じるの。それがすごく大切なことのように思える。だからいつまでも私の心の中には彼がいるの!」

 ベアトリスは感情が高ぶり自分の想いを噴出した。

 これで自分の正直な心情が心置きなく吐き出せたと思った。

 言い切った清々しさを一瞬感じ、胸のつかえが取れた気分だった。

 だがパトリックは首を斜めに少し掲げて冷静に対応する。

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