ピュアダーク
「どうだい、すっきりした? 僕もこれで君に恋するただの片思いの男。こんなものがなくったって僕はいつだって本気だよ。さてと、僕も疲れちゃったからこれ片付けてもう寝ちゃっていいかな」

 パトリックは、コーヒーテーブルの上の食べ残しのピザや紙皿を片付け、台所に入った。

 ベアトリスは言葉をなくし、ただ呆然とソファに座っていた。

 パトリックが再び顔を出し「お休み」と笑顔であいさつする。

「おや……すみ」

 ベアトリスも返事を返したが、パトリックの予期せぬ行動に驚きすぎて放心状態になっていた。

 婚約証明書が破棄されて嬉しいはずなのに、そんなものに頼らずに自分の思いを真剣にぶつけてくるパトリックの本気に押されていた。

 ──パトリック、やっぱりあなたって人は予測不可能。それって私はこの先も振り回されるってことなの?

「パトリック・マコーミック…… 」

 ベアトリスは小さくその名前を呟いていた。

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