ピュアダーク
 一時間目が終わるや否や、ベアトリスはトイレへと駆け込んだ。

 どんな髪型なのか気になって仕方がないのもあるが、ヴィンセントが側にくることで、クラスの女子に何か言われるのも嫌で逃げ込んだ。

 ベアトリスが恐れてるのはジェニファーがいないことをいいことに、ヴィンセントを独り占めしてると思われることだった。

 誰かが着色してジェニファーに必ず告げ口をする。

 そこまで先が読めていた。

 例え不利に語られたとしても、ジェニファーがそんな話を鵜呑みにするとも考えられなかった。

 二人の友情はそんなものじゃないとベアトリスは信じていた。

 それよりもここにある問題の方が今は重大だった。

 トイレの鏡に映る自分に絶句してしまった。

「何、これ!」

 叫ばずにはいられない。

 シャンプー以外で髪を洗ってはいけないことを深く知らされた。

 静電気を浴びたように跳ね上がり、使い古した箒のように、先が変な方向を向いてパサパサとはねている。

 洗っているときも手がキシキシとして滑らかさが感じられなかったが、これほど酷いとは思わず、わなわなと恥ずかしさに震えていた。

 ベアトリスが絶望感一杯で鏡を見ている時、ポニーテールの黒髪の下級生がモジモジしながら声を掛けようか背後で迷っていた。

 勇気を出したのか、一歩前に出て声を振り絞った。

「あのぉ、マクレガーさんですか?パトリックの婚約者の……」

 ベアトリスは自分の名前を呼ばれることより、パトリックの名前に反応して思いっきり力が入って振り向いた。

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