ピュアダーク
 学校内はほんの数日で、ガラスが全て新しいものに入れ替わっていた。

 しかし教室内はまだ完全には元通りになったとは言いがたく、隅々には壊れたものの破片が残り、荒れた雰囲気はそのままだった。

 ベアトリスはパトリックがくれた勇気を抱いて、教室内へと足を踏み入れた。

 ジェニファーがアンバーと黒板の前で楽しそうに話している姿が目に入った。

 ベアトリスはできるだけ平常心を装い、いつも通り振舞うがジェニファーがベアトリスの存在に気がつくと露骨に無視をした。

 ベアトリスは仕方がないと黙って自分の席に座る。

 話をする友達も居ないとわかっていたので、時間を潰すために予め本を持参していた。

 それを取り出し、読み始めた。

 これなら誰にも迷惑はかけず、本という世界に入り込んで暫しの孤独も紛れる。

 考えた末に用意したものの、いざ学校で本を読もうとしても自分の置かれてる立場が心に大きく影響して全く頭に入ってこない。

 それでも、教室では疎外感を感じこれを乗り越えるには読んでるフリをするしかなかった。

 そしてヴィンセントの席に目がいった。

 まだ彼は来ていない。

 彼の席を見つめながら頬を手で押さえ机の上で肘をついていた。

 その様子を遠くからジェニファーは憎悪の感情を抱き睨んでいた。

「ジェニファー、どうしたの。表情が怖いわよ。いつものあなたらしくない」

 アンバーに指摘されて、ジェニファーは一瞬はっとしたが、自分を取り戻したとき体の中から何かが暴れる感覚を覚えた。

 挑発されるような押さえられない感情がくすぶっているようだった。

 それはベアトリスを見ると波が押し寄せるように表面に出てくる。

 ジェニファーはベアトリスの存在を無視しようと必死に見ないようにした。

 クラスが始まるギリギリの時間にヴィンセントが教室に入ってきた。

 ベアトリスはその姿にドキッとしてしまう。

 思わず目を伏せたが、首を横に振り、自分の立てた仮説を抱きながら勇気を振り絞りヴィンセントを見ていた。

 ヴィンセントは無表情で、誰とも接触する気を見せず、ただ前を向いて席に着いた。

 ジェニファーがチラチラと様子を伺っていたが、ヴィンセントはもう言い訳しようとも近づこうとも、ジェニファーを見ることすらしなかった。

 ジェニファーはそれが気に入らず、目を細めきつい表情になっていた。

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