ピュアダーク
「今の子はなんなんだ? かなりベアトリスに敵意を抱いていたように見えたけど。まさかいじめられてたのか」

 ベアトリスはあの状況をまともに説明することもできず言葉を失っていた。

「彼女は、ベアトリスの親友のジェニファーでしょ」

 サラが口を挟んだ。

「親友? あれが? そうは見えなかったぜ」

「元親友って言った方がいいのかな。ちょっと三角関係でややこしくなっちゃったんだよね」

 サラは余計なことを言い出した。

「三角関係? どういうことだ?」

 パトリックの質問にサラは知ってる範囲で答えた。

 そしてそこにヴィンセントという名前をしっかりいれてパトリックの反応を伺った。

 ベアトリスがヴィンセントと一緒に授業をサボり、ヴィンセントに思いを寄せるジェニファーがそれを気に入らなくて怒ってることをまるで自分が見たことのようにサラは話した。

「サラ、やめて。それにどうしてあなたがそんなこと知ってるの」

 ベアトリスは部外者の口から言われることにショックを受け、肩を震わす。

 パトリックも、以前聞いたヴィンセントの話と照らし合わせて、あの時抱いた感情をまた蘇らせていた。

「ご、ごめんなさい。でしゃばって。でも学校ではかなり噂になってたから」

 ベアトリスの反応よりも、パトリックが顔を引き攣らせているのをみて、サラは慌てて自分を庇うように弁解した。

 ベアトリスは顔を歪まして首を横に振り、否定したい気持ちを抱えつつ、学校で笑いものになる程、自分達の出来事が広まっていると再確認させられた。

「サラ、お願い、私の話を人にはしないで。これは私の問題なの。パトリックも鵜呑みにしないで。さあ、もう帰ろう」

 ベアトリスは帰り支度をして、教室を出ると二人も無言でついていった。

 校舎を出るとサラが気を取り直して明るく話しかけた。

「あの、よかったら、一緒にアイスクリーム食べにいかない?」

「ごめん、今そんな気分じゃないんだ。また今度ね。でもパトリック、折角だからサラと行って来れば?」

 ベアトリスの言葉にサラは敏感に反応した。

 もしかしてと淡い期待を抱く。

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