ピュアダーク
 かつては親友であり、つねに優しかったジェニファー。

 原因は自分にあるとしても、あそこまでジェニファーが変わってしまうのはとても衝撃的だった。

 もちろんその要因はコールが偶然仕込んだ影とジェニファーの元々抱いていたベアトリスを憎む気持ちのせいだが、それを知らないベアトリスはこの先どうしていいのか途方に暮れていた。

 そしてサラが自分の話を口にしたことで、学校で噂になるほど人の関心を集めていることも拍車をかける。

 ヴィンセントから貰った手紙を思い出すと、自分だけ浮かれていたことに罪悪感を覚え、それが間違いであるかのように感情が萎んでいく。

 ジェニファーも苦しんでいると思うと、自分だけこそこそと ヴィンセントと接触するのを躊躇いだした。

 何より、人目についたときの周りの目も気になってしまう。

 必ず何か言われるのが目に見えていた。

 ──このままではずっと最悪のままだ。どうすればいいんだろう。

 朝からどんよりした曇り空だったが、その時、白いものがこぼれるように空から降ってきた。

「うわぁ、雹が降って来た」

 パトリックがベアトリスの肩に手を回し、早く歩くように示唆した。

 それと同時に雹からベアトリスを守ろうとしている。

 素直に頼りたくなるほど、彼の手は優しく頼もしかった。

 ──一体自分は何を求めてるんだろう。

 あれだけ心に迷いはないといいつつ、またパトリックを頼っている。

 ベアトリスはもつれるような足取りになりながら早足で歩いていた。

 はっきりしないベアトリスに喝をいれるかのように一筋の光が突き刺すと、雷が苛立つ剣幕で轟音を落とす。

 ベアトリスは体を収縮させ怯えた。

 パトリックは笑い声と共に大丈夫だともっと強く肩を抱き寄せる。

 雷の怖さと、心の弱さでパトリックに助けを求めるようにベアトリスは抱きついてしまった。

「ご、ごめん。ついそこに抱きつくものがあったから」

 すぐにパトリックから手を離す。

「なんだよそれ、電信柱でもよかったような言い方。遠慮なく僕を頼ってくれていいんだぜ。そのために僕はここにいるんだから。さあとにかく急ごう」

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