ピュアダーク
第九章
28 記憶の闇
宇宙に放りだされたようなどこまでも続く暗闇の中で、ヴィンセントはうつ伏せになって倒れていた。
徐々に集まるノイズのざわめきと、キーンと耳を貫く音で気がついた。
闇の不穏な音が耳元で不快にまとわりついている。
振り払うように立ち上がり、辺りを見回した。
四方八方に広がる闇はヴィンセントを飲み込もうとしていた。
「ベアトリス、君は一体この闇のどこにいるんだ」
まずは闇雲に動き回る。
だが、走り回っても何にもぶつからず、方向さえもわからない。
「ベアトリス、ベアトリス」
呼んでも返事がない。
ヴィンセントは何の手がかりも得られないまま、ただ辺りを無闇に走り回ることしかできなかった。
「くそっ、何も見えない、何も触れられない。これがベアトリスの意識の中なのか」
まだたっぷり時間はあるとはいえ、時間の感覚もわからず、タイムリミットのことを考えると、簡単にパニックに陥りそうだった。
意識の中に入れば、容易くベアトリスを見つけて引き出せると思っていただけに、自分の甘さにヴィンセントは腹を立てた。
「どうすればいいんだ」
何かを見つけなければと、勘を頼りに走った。
闇の中では景色の変化もなく、まるでフィットネスでマシーンにのってランニングしている気分だった。
「これじゃ拉致があかない」
それでもヴィンセントは何かにぶち当たるまで走り続けるしかなかった。
「ベアトリス! どこにいるんだ」
病室では、アメリアは部屋に設置されていたソファーに腰掛け、不安の表情を露骨に表して腕を組んでいた。
パトリックは落ち着かない様子で、狭い病室を何度も歩き回っていた。
「パトリック少しは落ち着きなさい。あなたがここで歩き回っても何も解決しないのよ」
「すみません。でもこの状況で落ち着く方が難しい。何かヴィンセントの手助けはできないのですか」
「あったら私も手伝ってるわよ」
パトリックは黙り込んでしまった。そして腕時計を見る。
「今の時期の日没は7時50分ごろ。10時間切ったってところか」
「まだたっぷり時間はあるわ。私達ができることは、この二人を信じて見守ることだけ」
アメリアとパトリックには二人がどのような状況にあるのか全く想像もつかない。
ヴィンセントはベアトリスのベッドに頭をもたげながら側でただ寝ているように見えるだけだった。
パトリックは唇をかみ締めながら、二人の安否を祈っていた。
徐々に集まるノイズのざわめきと、キーンと耳を貫く音で気がついた。
闇の不穏な音が耳元で不快にまとわりついている。
振り払うように立ち上がり、辺りを見回した。
四方八方に広がる闇はヴィンセントを飲み込もうとしていた。
「ベアトリス、君は一体この闇のどこにいるんだ」
まずは闇雲に動き回る。
だが、走り回っても何にもぶつからず、方向さえもわからない。
「ベアトリス、ベアトリス」
呼んでも返事がない。
ヴィンセントは何の手がかりも得られないまま、ただ辺りを無闇に走り回ることしかできなかった。
「くそっ、何も見えない、何も触れられない。これがベアトリスの意識の中なのか」
まだたっぷり時間はあるとはいえ、時間の感覚もわからず、タイムリミットのことを考えると、簡単にパニックに陥りそうだった。
意識の中に入れば、容易くベアトリスを見つけて引き出せると思っていただけに、自分の甘さにヴィンセントは腹を立てた。
「どうすればいいんだ」
何かを見つけなければと、勘を頼りに走った。
闇の中では景色の変化もなく、まるでフィットネスでマシーンにのってランニングしている気分だった。
「これじゃ拉致があかない」
それでもヴィンセントは何かにぶち当たるまで走り続けるしかなかった。
「ベアトリス! どこにいるんだ」
病室では、アメリアは部屋に設置されていたソファーに腰掛け、不安の表情を露骨に表して腕を組んでいた。
パトリックは落ち着かない様子で、狭い病室を何度も歩き回っていた。
「パトリック少しは落ち着きなさい。あなたがここで歩き回っても何も解決しないのよ」
「すみません。でもこの状況で落ち着く方が難しい。何かヴィンセントの手助けはできないのですか」
「あったら私も手伝ってるわよ」
パトリックは黙り込んでしまった。そして腕時計を見る。
「今の時期の日没は7時50分ごろ。10時間切ったってところか」
「まだたっぷり時間はあるわ。私達ができることは、この二人を信じて見守ることだけ」
アメリアとパトリックには二人がどのような状況にあるのか全く想像もつかない。
ヴィンセントはベアトリスのベッドに頭をもたげながら側でただ寝ているように見えるだけだった。
パトリックは唇をかみ締めながら、二人の安否を祈っていた。