ピュアダーク
「くそっ、段々外が暗くなってきた。日没まであと1時間切ってしまった」

 パトリックは、我慢がならないと、片手で拳を作り、もう片方の手で自分のパンチを何度も受けていた。

「パトリック、まだ1時間もあるのよ。悲観するのは早いわ」

「よく落ち着いてられますね。もし、ヴィンセントが戻ってこなかったら、どうするおつもりですか。リチャードだって自分の息子を失えば怒りも収まらないでしょう。そしたらその腹いせにベアトリスのライフクリスタルを奪ってしまうかも」

「あなた、リチャードがそんな人だと思ってるの。それにヴィンセントは必ず戻ってくる。焦る気持ちはわかるわ。だけど信じましょう。必ずヴィンセントはやり遂げてくれるわ」

 パトリックは安易に愚痴をこぼしてしまったことを恥じ、バツの悪そうな顔をしていた。

 祈るしか他ならないと、椅子に座りり、強く念じるようにびくとも動かなくなった。

 残り1時間を切ってしまった。それでもヴィンセントはまだ過去の映像にこだわっていた。

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