ピュアダーク
 ヴィンセントはそれとは対照的に、穏やかな表情で、病院の建物を背にして、夜の星空を見上げていた。

 ライトソルーションは思った通りに使えなかったが、そんなに悪い結果でもなかったと、炭酸の泡が体からシュワーッと抜け出すような爽やかさを感じ、少し口元が微笑んでいた。

 ベアトリスが目覚めて、最初に発した彼女の言葉が自分の名前だったことに心がなみなみと潤う。

「ベアトリス、意識をまた共有して、君への想いはもう抑えられなくなったよ。諦めるなんて俺はしない。また親父に逆らうことになるけど、俺も覚悟を決めた。このダークライトの力は君を守るためにあるんだって気がついたよ」

 ヴィンセントは一度病院を振り返り、ベアトリスを想い描いた。

 意識の中で抱き合えたことを思い出し、余韻に浸る。

 そしてその思いを胸に抱え、疲れていたにも関わらずその足取りは方向を定めしっかりと大地を蹴ってリズム感を帯びていた。

 背筋を伸ばし歩くその姿は、抱いていたネガティブな気持ちが払拭され、星影に輝いていた。

 しかしこの日の騒動はこれで終わりではなかった。

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