ピュアダーク
 リチャードが傷だらけになってそこに倒れている。

「大丈夫か。一体何があったんだ。どういうことなんだ。親父がこんなにやられるなんて」

 ヴィンセントはリチャードを肩で担ぎ、部屋に運んだ。幸い、ベッドルームは荒らされてなく、リチャードをゆっくりベッドに寝かしてやった。

 リチャードは 痛みで体がぴ くっと動き、顔が引き攣る。

 それでも声を絞って話しかけた。

「ヴィンセントか、こんなに遅くまでどこにいってたんだ」

「説教してる場合かよ。一体どういうことなのかこっちを先に説明してくれ」

「コールだ。コールが潜んで待ち伏せしていた。私もすっかり油断していた。まさか、自ら敵陣に攻めて来るとは考えもしなかった。奴は自ら動き出した。今までの奴の動きからして初めてのことだ。だけどお前がここに居なくてよかったよ」

「どうしてコールが親父を狙うんだ」

「先週の金曜日の夜、ベアトリスのいる地域附近に奴が現れた。私のテリトリーだと知って、これ以上隠れて行動するには限界があると気がついたのだろう。目的を確実に達するためには私が邪魔だ。奴は私を先に消すつもりで先制攻撃を仕掛けてきた」

「ベアトリスの居る場所がばれたのか?」

「いや、それがばれてはいないようなんだ。場所がわかれば、テリトリーの中だといえ、コールは真っ先にそこに行く。しかしそれをしなかった。ただ私の存在を疎んじただけなのか、他に何か理由があったとしか思えない。コールの行動パターンを変えるほどの何かがあったはずだ」

「行動パターンを変えるほどの何か…… あっ、その日、親父の留守中にブラムがやってきた」

「何っ! どうしてもっと早く言わない。奴は何をしに来たんだ」

 ヴィンセントはポーションを貰ったとは言えず、そのことについてはできるだけしらばっくれた。

「親父に挨拶しに来たって言ってた。それと今後の対策についても話があったようだったが」

「まさかブラムの奴、面白半分でコールを引っ掻き回してるのか。あいつならやりかねん。アメリアが手助けを頼んだのだろう。しかし、なぜコールをあのテリトリーに近づけさせたんだ」

「ブラムの対策として、親父の存在を知らしめたかったんじゃないのか。コールが好き勝手に動けないように、先手を打ったって感じかな」

「そうだとしても、それは裏目に出てしまった。却って挑発されたとコールは受け取ったんだ。やっかいなことになってしまった。しかし奴も今夜のことでかな りのダメージを受けているはずだ。ちょっとやそっとでは私を倒せんと思ってることだろう。しかし次はどんな手を使ってくるかだ。今日は油断してたからこの 有様だが、次回は必ず始末してやる」

「親父、俺も手伝うよ。それに俺、言わなくっちゃならないことがある」

「なんだ、急にかしこまって」

< 228 / 405 >

この作品をシェア

pagetop