ピュアダーク
「俺、ベアトリスを諦めない。俺なりにベアトリスを守りたいんだ。だから、親父との約束破らせて貰う。追い出される覚悟もできてる」

「本来なら雷を落とすところだが、私もコールのことが気がかりになってきた。お前の手助けが必要になるかもしれない。私からアメリアに事情を話す。ベアトリスを守るにはヴィンセントも不可欠だと」

「親父! それじゃ」

「勘違いするな。あくまでもベアトリスを守るための騎士としてお前を配置するだけだ。それにお前はベアトリスには簡単には近づけない。それ以上のことはできないはずだ。判ってるな」

「ああ、それでもいいさ。親父の許可が出ただけでも儲けもんだ」

「今朝からどこかおかしいところがあったが、今も、いつもと違ってお前の気がとても落ち着いて気品溢れているようにみえるんだが、何かあったのか」

「いや、何もない。ただ、今までとは違う俺になれたような気がする。もう感情任せに暴走はしない。コントロールできそうな気がするんだ。母さんも言ってただろう。このダークライトの力はいいことに使えって。そしてベアトリスを守ってやれって」

「ああ、そうだったな。シンシアはそんなこと言ってたな。お前はベアトリスを守るためにその力を授けられたのかもしれないな。それなら赴くままにやってみろ」

「もちろんさ」

 ヴィンセントはリチャードと分かり合えたことに心からの笑みを浮かべていた。傷だらけのリチャードが少し小さく見える。

 その時同じように、リチャードは一回り大きく成長したヴィンセントに頼もしさを感じていた。

 リチャードは手を差し伸べるとヴィンセントは食いつくように強く握り返した。

 言葉で伝えなくとも、そこには親子の信頼と絆が心に直接届いていた。

「しかし、かなり家が荒らされてしまった。ヴィンセント後は頼んだぞ。私は傷のために動けない」

「えっ、俺一人で片付けるのか?」

「他に誰がいるんだ?」

 まじめに聞き返すリチャードに呆れながらもヴィンセントは急に可笑しさがこみ上げる。

 荒らされた部屋と壊された家具の中、二人の笑い声が家の中で光明を見出していた。

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