ピュアダーク
「あー、ベアトリス。事故にあって体の具合がいつもと違うから苛立ってるんだろう。心にトゲを付けてたら誰も近づけないじゃないか。ほら、お手製のレモ ネードだけど、ちょっといつもより甘くしたんだ。これで心のトゲも取れるよ。あのとき僕が取ったような行動しないでくれよ」

 ベアトリスはやられたと思った。

 目をギュッと強く瞑り、苦い顔をしている。

 自分が子供のときにパトリックに言った言葉を使われると、意地もはれなくなってしまった。

 またベッドから身を起こし、無表情で水筒を受け取った。

「これを飲んだら、二人とも病室から出て行ってくれる? 私一人になりたいの」

 二人は、この場はベアトリスのいいなりになるしかなかった。

 レモネードを飲んでもらわないともっと都合が悪くなる。

「ああ、ついでにサンドイッチも置いておくね。お腹空いたら食べるんだぞ」

 パトリックは紙袋をベッドの隣にあった台に置き、早速病室を出て行った。

 ベアトリスは少し胸が痛くなり、その気持ちを誤魔化そうとストローに口をつけた。

 アメリアは充分な量を飲んで欲しいと祈るようにそれを見ていた。

 一口飲んだとたん、ベアトリスは体の乾きに勝てないようにごくごくと飲みだしてしまった。

 アメリアはそれをみて安心すると、何も言わず出口に向かった。

「アメリア!」

 ベアトリスは呼び止め、アメリアは振り返った。

「我がまま言ってごめんね。私が何もかも悪いの。本当にごめんなさい」

「いいのよ。事故にあって精神的ショックを受けてるんだもの。平常心でいられる訳がないわ。とにかくゆっくりと寝てなさいね」

 笑顔を見せてアメリアも病室を去った。

 廊下ではパトリックが突っ立って待っていた。

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