ピュアダーク
 次の日、コールはポールに成りすまし、教室の一番後ろの席で授業を受けていた。

 生徒達を見回し、ポールの記憶を整理して人間関係を確認していた。

 ──ポールは友達少ねぇんだな。そして好意を寄せてるのが、あのヴィンセントにお熱のお嬢さんか。まああの子はノンライトでも飛び切り美人だからどんな男にもてるな。それにしても、なんでヴィンセントはお熱じゃないんだろう。

 コールはヴィンセントの背中を見ていた。

 ──ヴィンセントがお熱を上げてるベアトリスっていうのは、席が一つ空いてるところか。今日は欠席か…… 

 次に黒板に視線を移す。

 情報収集とはいえ、高校生に成りすまし、つまらない授業を受けるのは苦痛だった。

 コールは大きな欠伸をして、背もたれに反り返ってだらけた態度を取った。

「おい、ポール。なんださっきからキョロキョロしてるし、その態度は! 真面目にせんか」

 先生から注意をうけてしまった。

 コールはすくっと立ち上がると、針金が背広を着てるようなその教師の風貌をからかう意味と喧嘩を売る決まり文句をひっかけて言った。

「You want a piece of me?(俺とやる気か?)」

 挑発する言葉を投げかけたが、コールは言葉通りに、体の一部が欲しいかと引っ掛けて、自分の体の脂肪をつまんで先生に向かって投げるフリをすると、教室内は大爆笑となった。

 普段大人しく、誰からも相手にされないはずのポールは、この一件であっという間に好印象を植え付けた。

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