ピュアダーク
 教室内に変化はなく、黒い影もどこにもない。

 あの不快に感じた赤いゼリーの空間はそのかけらも残さず、全てが何事もなかったように、いつもの光景がそこにあるだけだった。

 また気絶して悪い夢をみたと片付けられる筋書き。

 このあとは誰にも聞くこともできずに、自分だけで処理しなければならない展開。

「おい、ミス・マクレガー、授業を受けられるんだったら早く席につきなさい。みんなもからかうんじゃない」

 先生はただ事務的にその場をやりすごした。

 ベアトリスに視線を向け小声でひそひそ話をするものがいても、それ以上何も言わなかった。

 ベアトリスは重い足取りで席に向かう。

 そしてヴィンセントに再び一瞥を投げかける。

 ヴィンセントは先生の話に耳を傾けノートを取っていた。

 ベアトリスを無視してやり過ごしたものの、ペンを持つ手に力が入っていた。

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